告白 〜ある晴れた日とノスタルジイ〜 「・・・・・・・どうしたの?」 一人で泣いていた僕に、初めて声をかけてくれたのはキミだった。 「ひとりがさみしいの?だったら、いっしょにあそぼ??」 僕は、あの頃からキミが大好きだったんだよ。 キミが覚えていなくても、僕は忘れない。 忘れられなかったんだよ。 *** 「アーヴァインお帰りなさい!!」 「アービン、お帰り!!」 「ただいまー!!」 あの戦いが終って、僕たちは一ヶ月の休暇をもらった。 僕は、とりあえずガルバディアに帰省することにした。 ホントはさ、セフィと一緒にトラビア観光〜♪なんてた くらんだりしたんだけど。 でも、ガルバディアガーデンで任務を受けたときから、全 然帰ってなかったし。 僕、家族にも元気な姿を見せなくちゃならないと思ったから、 とりあえず今はガルバディアにいる。 もちろん、もう少ししたらトラビアに行こうとは思っているけどね。 僕には、家族がいる。 父、母、そして兄貴。 他のみんなとは違って、僕の場合血のつながった家族だ。 魔女戦争のとき、僕の住む町で激しい地上戦があって。 住民は山の避難所へと避難したんだけども、そのときの混乱のせい で僕は家族とはぐれてしまった。 兄貴、母ちゃんと手をつないでいたのに、押し寄せる人波に小さかった 僕は飲まれてしまって。 気がついたら、焼け野原で一人ぼっちだった。 そんな僕をママ先生たちが保護してくれたんだそうだ。 僕があの孤児院にいたのはそんなに長い間ではなかった。 1、2年くらいのものだったと思う。 だから、特にスコールなんかは僕のこと覚えてないんだと思うけどさ。 僕の両親は必死になって僕を探してくれていたらしい。 ママ先生の孤児院の噂を聞いて、はるばるセントラまで訊ねてきてくれた。 そして、僕は両親の元へと帰ることになったんだ。 でも、僕は、昔は辛かった。 父ちゃんも母ちゃんも兄貴も、俺に負い目を持っているのがわかったから。 あの戦いの最中で、はぐれてしまうのは仕方がなかったと僕は思うけど。 兄貴や、両親たちはそうは思えないみたいだった。 誰のせいでもないのに、みんなが自分のせいだと自分を責めていた。 僕がいることで、かえってみんなの心の傷を深くしているみたいだった。 前にみんなに言ったと思うけどさ。 僕、無限の未来なんて信じてないのは、ここからきているのかもしれない。 僕の家族だって、選べる道は少なかった。 僕とはぐれない未来を選べるのなら、迷わずそうしていたと思う。 でも、できなかった。 僕の家族も、そのときできることは本当に少なかったんだ。 それでも、その少ない道をたどっても僕を、見つけ出してくれた。 僕はそれに感謝しこそすれ、恨むことなんてしない。 それに、僕は孤児院で運命の出会いをしたわけでもあるし。 このへんのことは照れくさくて言ってないけどさ。 だから、僕は幸せだったんだよ。 それでも、やっぱり両親たちが僕を見る目は辛そうで。 気にしないでと言っても、どうしても気になってしまうみたいだった。 だから、僕はガーデンに入ることにしたんだ。 「いきなり連絡がとれなくなっちゃうし、ガーデンは揉めてるし。 本当に心配したのよ?」 「でも、無事でよかったな!!父ちゃんももうじき帰ってくるし。 楽しみにしてたぞ、父ちゃん。」 「ありがとー。僕もみんなに会えて嬉しいよ〜。」 やっぱり、ちょっとでも帰ってきてよかった。 僕の家族だもの、大事なのは確か。 でも、なんだかみんなが僕を見る目が昔と違うみたいだ。 なんだろう・・・・? *** その夜は、父ちゃん兄ちゃんと宴会を繰り広げた。 僕、未成年なんだけどな〜。 でも、二人とも全然そんなことは気にしてくれなくって。 それに、二人の嬉しそうな顔見ると、僕も幸せな気持ちになったし。 なんだか、大昔の僕たちに戻ったみたいだ。 僕がはぐれる前の、家族の雰囲気だった。 僕はあんまりGFのお世話になっていないから、結構いろんなことを覚えてる。 ひとつひとつの思い出は、僕にとって大切なものだ。 なくしたくない。 忘れたい想いでも、なくしたくない。 それら全てがあって、今の僕がいるんだから。 そういえばアルティミシアに言われたっけ。 想いは時とともになくなるって。 そんなことない、と僕は思う。 細かなことは忘れても、きっと根っこの気持ちは残ってる。 そして、何かの拍子に溢れだすんだ。 セフィ。 キミへの気持ちもそうだったよ。 *** とりあえず、次の日はガルバディアガーデンに報告に行くことにした。 一応、バラムの方から連絡は行ってるみたいだったけど、僕自身でも行った方が いいと思ったからだ。 だって、僕まだガルバディアガーデンの生徒だしさ。 バラムに移ることになったとしても、それについて手続きとかもあるだろうし。 でも、後で後悔した。 行かなきゃよかった・・・・・・・・。 「アーヴァイン・キニアス、ただいま戻りました!!」 「うむ、ご苦労。」 結局、今またガルバディアガーデン学園長になったのは、ドドンナさんだった。 マスターはこれから決めることになったらしい。 今まで、ガルバディアガーデンはバラムのように、きっちり権限分けができて いなくって。 5機関会議もちゃんと機能しているとは言い難かった。 そこを狙われて、この間の混乱になったんだ。 でも、その反省を元に、こうやっていい方向に向かっている。 こういうの見るとさ、嬉しいよねぇ。 僕たちがしたことの意味があったような気がしない? やっぱりさ、人って何かの役に立ちたいって思うものなんだよ。 「キニアス君。 バラムから連絡はきているが、君はバラムに移籍するんだそうだね?」 「はい、そのつもりです。」 「その後のことは聞いているかね?」 その後のことってなんだろう? えっと、とりあえず学籍だけバラムに移るんじゃないのかな。 僕がよくわかっていない顔をしているのを見たドドンナ学園長は少し 溜息をついた。 ・・・・・・・なんだろ。 なんか、嫌な予感がします。 「君は、SeeDになることが決定したんだよ。 まだ極秘だが、これからSeeDは全学園で育成されることになる。 ここガルバディアガーデン出身のSeeDは今までいなかったのは 知っているか?」 ガルバディアガーデンはガルバディア軍部との関係が深いこともあって、 たいていの生徒はそのまま軍部へと就職している。 そのことは知っていたけど、でもまさかガルバディアガーデン出身のSeeD が誰もいないなんてことは知らなかった。 「いいえ、初耳です。」 「君は、ガルバディアガーデン初のSeeDになる。 君にはその資格があるし、それにふさわしいとも思う。 そして将来は是非このガルバディアガーデンで後進の指導に当たって欲しい。」 「はあ・・・・・・。」 立て続けに言われて、僕はとりあえず頷いた。 「そして、だ。SeeD試験も受けてもらうことを、バラムと決定した。 一応、実技の方は免除となっているがね。」 「はあ・・・・・・・。」 「まあ他のSeeDとの関係上、試験全部を免除することはできなかったようだ。 それに、君はSeeD試験を受けるための単位も足りていない。 ・・・・・・・わかるね?」 ・・・・・・・・もしかして。 「君が足りない単位は20だ。 それをここで集中的に取った後、筆記試験もパスしてもらう。」 ・・・・・・ちょっと、マジですか!? 「あのっ、僕今休暇中でっ・・・・・・!!」 「すまないが、その休暇は全部勉強に費やしてもらいたい。」 な・ん・で・す・と。 ドドンナ学園長の言ったことは僕を打ちのめした。 だって、それって僕には全く休みがないってことじゃん!! 「自宅の方には連絡をしておくから、今日から集中的に授業を受けてもらうよ。 君にはいきなりのことで、気の毒だとは思うが、まあ今しか時間はないしな。 寮の君の部屋がそのままにしてあるから、そこを使うといい。」 「・・・・・・・・・。」 「返事は?」 「・・・・・・・・了解です。」 「よろしい。」 全然よろしくないよ。 まあさ、確かに他のみんなは全員SeeD資格を持ってるわけで、僕も取りたいなあ とは思っていたけどさ。 でも、こんなに急にじゃなくって、もっと落ち着いて取りたかったよ・・・・・。 せめてバラムで取る、とかさあ。 そしたらセフィに教えてもらえたりできたのにさー・・・・・。 これじゃあ、トラビア観光も無理じゃん。 こうなると、昔の自分を呪いたくなるね。 どうしてもうちょっと真面目に授業取ってなかったんだよ、僕(涙)。 「授業予定は朝の8時から夜の10時まで。それでぎりぎり単位分の授業は受けられる だろう。では、先生方に紹介しよう。」 「失礼します。」 その声と同時に、数人の教師たちが入ってきた。 その中の一人の姿に、僕は心底驚いた。 見間違い、じゃない。 彼女だ。 まだ、ここにいたんだ。 各担当教官たちの自己紹介を次々に受けて、そして自分も挨拶をし。 そして、ついに彼女の番になった。 「魔法学理論担当、マドレーヌ・ボルガンです。よろしく、キニアス君。」 「アーヴァイン・キニアスです。こちらこそよろしくお願いします。」 僕が挨拶をすると、彼女はくすりと笑った。 その笑い方も変わってはいなかった。 1年前のあのときのまま。 一年前。 あの戦いのためにガルバディア・ガーデンを離れる時まで。 マドレーヌと僕は付き合っていた。 彼女は先生で、僕は生徒だったけれど。 *** 「久しぶり、ね。ぼうや。」 「相変わらずそう呼ぶんだね。」 あの後、とりあえず解散になり。 その後、僕は昔よく授業をさぼっていた場所へ向かった。 そこには、きっと彼女がいると思ったから。 ここで、よく二人で会っていたから。 そして、やっぱりマドレーヌはそこにいた。 あの頃と同じように、木陰に座って本を読んでいた。 「先生、まだここにいたんだ。もうやめちゃったかと思ってたよ。」 「わたしは、一応教師になりたくてなって、しかもこの職業に愛着もあるの。 そう簡単にやめたりしないわよ。」 マドレーヌはそう言って、淡い金髪の巻き毛を揺らして笑った。 悪戯っぽそうに瞬く茶色の瞳。 何もかも、昔のままだ。 だけど、あの頃とは決定的に違うものも、ある。 「ぼうや、SeeDになるんだって?あの頃のつけが一気に回ってき たってとこね、今は。」 「笑わないでよ〜。僕も後悔してるんだからさ。」 「偏った授業の取り方してたものねえ。あの頃から後で苦労するわよって、 わたし注意したはずよ。」 「はいはい、先生の言うとおりでございました。」 ホント、一年前の僕はちゃらんぽらんっていうかさ。 なんだか、何もかもがめんどくさかった。 どこにも居場所がないもどかしさを感じて、ひとりで彷徨っていた。 そして、寂しいから、どこかに居場所が欲しくって。 一人でいるのは嫌で。 いろんなオンナノコと遊んだりしてた。 その中で、マドレーヌは、ただ一人、僕の孤独を見つけた人だった。 だって、彼女も同じだったから。 報われない想いを抱えて、孤独を抱えていたから。 そんな僕らはまるで戦友のように、ここで色々な話をしたり、肌を重ねたり。 互いの傷を舐め合うような関係。 ダメな関係だったかもしれないけど、それでも僕は癒されてた。 あなたがいてくれてよかった。 あなたもそうだったのかな。 でも、多分あなたは気づいてるよね。 あの頃呼んだ呼び方で、僕があなたのことを呼ばないことを。 僕には、もうあなたを「レーヌ」と呼ぶことは出来ない。 僕にはもう、そんな資格はないから。 「・・・・・・・・あれからね、色々、あったわ。」 「・・・・・・・うん、僕もだよ。」 「結局、あの人はわたしのことはただの都合のいい女としてしか見ていなかった。 ぼうやにも言われたわね?あんな男やめとけって。」 「・・・・・・今考えると、僕も結構無神経だよね。ごめんね。 僕だって、同じようなことしてたのにね。」 恋愛感情がなかった、とは言わない。 確かにあなたのことは好きだったよ。 でもね、僕も自分の本当の気持ちをごまかしていたから。 あなたも好きだったけど、もっと好きな女の子がいたんだ。 そのこと知っていたのに、マドレーヌをあの子の代わりにした。 ・・・・・・・・最低、だよね。 僕が謝ると、マドレーヌは驚いたような顔をして、それから笑った。 「・・・・・・・何言ってるの?それを言ったら、わたしだってそうよ。 キミを彼の代わりにしてたんだから。」 「・・・・・・・でも、ごめん。」 「じゃあ、わたしも、ごめん。」 二人の間を、涼しげな風が通り過ぎた。 その風が、今の僕らの関係を示しているかのようだ。 「わたしね、結婚したの。」 「・・・・・・・え?」 「仕事上は旧姓で通してるけどね。三ヶ月前に。 あ、でも彼とじゃないわよ。別な人。 わたしがボロボロだったときも、ずっと傍にいて励ましてくれたひとなの。 愛してるの、そのひとのこと。」 「・・・・・・・そっか。よかったね。」 「うん。」 そう言ったマドレーヌの顔は見たことがないくらい、幸せそうで。 ホントに幸せなんだってことがわかった。 よかった。 あの、壊れそうなほど泣いていた彼女の姿はもう、ないんだ。 よかった。 幸せになってくれて。 こんなこと望むのは、僕のエゴなのかもしれないけども。 それでもあなたが幸せで僕は嬉しい。 「ぼうやも、でしょ?」 「・・・・・・・え・・・・・・?」 「ぼうやも、やっと探し物が見つかったみたいね。 だって、昔みたいにちゃらちゃらしなくなって、落ち着いたし。 キミは人に気を使う子だったから、いっつも無理して明るく振舞ってたわね。 でも、今は、すっごく自然体になってる。だから、よかったわ。」 マドレーヌはホント、頭がいい。 やっぱりあなたには見抜かれてたんだよなあ。 そこまで知ってて、それでも僕を甘やかしてくれていたんだね。 僕はくすりと笑った。 「ホント、先生には敵わないな〜。」 「だって、先生ですから。」 そう言ってから、二人で笑いあう。 「・・・・・・その子とはうまくいった?」 「まだ、告白してないよ。なんていうかさ〜、あんまり意識されてないって感じ?」 「ダサいわね。」 「うるさいよ。」 「さて、と。」 マドレーヌはそう言うと、ぽんぽんと草を払い落として立ち上がった。 「そろそろタイムリミットね。もう行かなきゃ。」 「あー、うん。」 「もう、キミのことはぼうやとは呼ばないわ。」 「そうなの?」 僕が訝しげな顔をしたのがおかしかったのか。 マドレーヌはひとしきり笑った。 「もう、わたしたちの関係は終ったでしょ?お互い、大事なものができたんだし。 それに、あなたはもうあのころのぼうやじゃないわ。 ちゃんと、あなたの居場所を見つけることが出来たんでしょう? だったら、どこに行ったらいいかわからなくて泣いていたぼうやじゃないわ。」 「・・・・・・あの頃だって、泣いてなかったよ。泣いてたのは先生だろ〜?」 「そう?わたしには泣いていたように見えたんだけど?」 泣きたかったよ、ホントは。 泣けなかっただけで。 「でもさ、これからはただの先生と生徒、かあ。なんだかつまらないね。」 「贅沢ね。じゃあね。」 僕も草を振り払って立ち上がった。 立ち去るマドレーヌに呼びかける。 「先生に会えてよかったよ!!」 「・・・・・・わたしもよ。 今までした練習の成果、出しなさい、少年。」 そう言って意地悪そうに微笑むマドレーヌは完璧な大人の女性だった。 まったく、そこまで見透かしてるんだもんな〜。 でも、間違ってるよ、先生。 先生との間であったことは、先生との思い出。 セフィとの間であったことは、セフィとの思い出。 それらは別物で、一緒になんてできるわけないじゃないか。 参考にもならないよ。 練習なんかじゃなかった。 あなたのことは、他に変えられない大事な思い出として覚えてるよ。 さよなら、レーヌ。 そしてありがとう。 僕は、確かにあなたのことが好きだったよ。 *** 夜になって、兄貴が僕の荷物を持ってきてくれた。 いきなり、ガーデンに雪隠づめになることになったから、着替えとかを持ってきてくれたのだ。 「ごめんね〜、わざわざ。」 「いいよ、どってことないさ。でも、お前も大変だなあ。」 「可哀想だと思うだろ〜、兄ちゃんも。」 「まあなー。」 兄貴は、「へー、これがガーデンの部屋か。」とかきょろきょろしてて。 それからおもむろに机の上の写真立てを見た。 「・・・・・・これ。」 「あ〜、僕家族の写真って、これしか持ってなかったからねぇ。」 「大事にしてたんだ、これ。」 「当たり前じゃない〜。」 写真立てに入っている写真は二枚。 一枚は、スコールやセフィ、ゼル、リノア、キスティスと撮った写真。 もう一枚は、ガーデン入学のときに撮った家族写真。 でも、この家族写真はあんまりいい写りじゃない。 どこかぎこちなく笑う僕たちの姿がそのまんま映し出されてる。 昔は、この写真見るのが嫌だった。 コレを見ていると、僕には居場所がないってことを思い知らされるような気がしたから。 僕という異分子が、家族を乱しているような気がしてならなかったから。 でも、今は違うよ。 どうしてぎくしゃくしていたのか、その理由がわかるから。 僕たちは、遠慮しすぎていたんだよね。 嫌われるのが怖くて、おたがい手を出しかねていたんだ、きっと。 誰がいけないとか、そういうことじゃなくって。 好きな気持ちが大きすぎて空回っていたんだよね? 写真立てを取り上げて、兄貴は写真をそっとなぞる。 「ホント、俺たちみんなヘンな顔してるよな・・・・・・。」 「でも、それも僕たち家族だったんだよ?」 「・・・・・・・そうだな。」 そう言うと、兄貴は懐かしむように写真立てをそっと戻した。 「お前、この一年で色々あったんだな。」 「・・・・・・・なんで〜?」 「わかるよ。どことなく遠慮がちだったお前が、ちゃんと自然に振舞えるようになった。 俺たち、そんなお前を見て嬉しかったし。」 「・・・・・・・そんなに変わったかな・・・・?」 「変わったというより、戻ったって感じかな。 本来のお前を取り戻したっていう感じがする。」 「・・・・・・・そっか。」 兄貴はほっとしたように笑っていた。 ほら、ね。 僕たちは空回っていただけなんだね。 「じゃあ、気をつけろよ!!無理すんじゃねーぞ。」 「うん、ありがと〜。」 「それから。たまには帰って来いよ。彼女も連れて来い。」 「あ〜、うん・・・・・。って、僕今は彼女いないよ?」 「好きな子はいるだろ?うまくいったら連れて来いよ。」 どうしてみんなして、僕に好きな子がいるってわかるんだろう? そんなにばればれなのかなあ・・・・。(ま、隠してないけどさ) これじゃあ、リノアのこと笑えないよ。 兄貴をガーデン出口のところまで送っていって。 僕は一人、しんとしたガーデンの中を歩く。 きっとね、セフィのおかげなんだよ。 いっつも自然体で、自分をごまかすことをしない彼女が好きで。 そんな彼女に憧れて、そうなりたいって思ったから。 だから、僕は僕らしくなることが出来た。 セフィだけじゃないね。 スコールや、ゼルや、みんながみんないい意味で変わったよね。 そんなみんなの姿を見て、僕も変わりたいって思ったんだ。 それに、僕がどうであったとしても、きっとみんなは僕のことを見捨てない。 あの戦いのなかで得られた実感だ。 あの戦いで、僕らはやっと自分を取り戻した、のかな。 ねえ、セフィ。 僕は、色々あったときもキミの事は忘れなかった。 忘れることなんてできなかった。 二度と会えないって思っていたのに、再会できて僕がどんなに戸惑ったか、 キミは知らないでしょう? こんな僕は見られたくなくって、それでもキミに忘れられているままなのも嫌で。 色々虚勢をはってみたりしたけど、でも結局そんなことはやめちゃった。 これは、スコールのおかげでもあるかな。 スコールは、ホントに変わったよね。 まあ、基本的にはあんまり変わってないんだけどさ。(クールなところとかね) でも、昔は彼のいいところが全然隠されていた。 ちゃんとみんなことを考えているのに、そうでないように振舞っていたり、とか。 でも、最近は彼の思っていることや気持ちが、こっちにも伝わるようになった。 きっと、自分の気持ちをごまかしたり隠したり、しなくなったからだと思う。 ちゃんと自分の気持ちを言葉に出して言うように努力してるからだと思う。 それってすごいことだよ。 しかも、彼は自分から変わろうと頑張ってたもんなあ。 それがどれだけ大変なことか、勇気がいることか、僕はわかるよ。 それ見てたら、なんか僕ってかっこ悪いって思った。 手に入らなかったら泣くくせに、いつまでも自分の気持ちをごまかしていて。 だから、ホントにちょっとずつだけど、僕も変わろうと努力した。 だって、セフィはあきらめられなかったんだから。 これからもきっと、あきらめられないんだから。 だったら少しづつでも彼女に近づきたい。 先生にハッパかけられたからってわけじゃないけど。 僕、次にセフィに会ったら、僕の気持ちを素直に伝えようと思う。 きっと、セフィは思いもしないことだろうけど、でもちゃんと僕の言葉は聞いてくれるだろう。 そして、僕のことを覚えていて欲しい。 僕が、キミのことを大事な女の子だって思っていることを。 そして、僕らしく生きていくんだ。 そんな僕を見て、僕のことも好きになってくれたら、もっと嬉しい。 明り取りの天窓から、月と星が見える。 この夜空も、きっとセフィにつながっている。 さ、明日から頑張ろう。 キミにもっと近づくために。 僕は、僕にできることをする。 end. |