13.オトコマエ
(シュウ、キスティス 19歳)


「シュウ、誕生日おめでとう!・・・・・って、すごいわね、それ。」
「ありがと、キスティス。
悪いんだけどさ、ちょっと運ぶの手伝ってくんない?」
「いいわよ。」


朝、執務室にやってきたシュウの大荷物を見て、キスティスは軽く眉を上げる。今日はシュウの誕生日だ。執務室へ来るまでの出勤中に、どうもたくさんの荷物を手渡されたらしい。荷物にも入りきらず、なんとかかんとかここまで持ってきた、という感じであった。


「こっちにも届いてるわよー。」
「はー、ホントにね。嬉しいんだけど申し訳ないよね・・・・。」


そう言うと、シュウは溜息をついて一つのプレゼントのカードを開いた。それを覗き見て、キスティスも苦笑する。


『シュウお姉さま、お誕生日おめでとう御座います!
シュウお姉さまがお生まれになって、こうやって記念すべき今日を祝えるのは本当に嬉しいです。これからも、いつまでも素敵なお姉さまでいてくださいvv』


「熱いわねえ、相変わらず。きっとこの山のようなプレゼント全部そうでしょう?シュウのファンの子達に、私恨まれるかしら?」
「冗談やめてよ、キスティス。もうさ、あたしあんまり『何が好き』とか言わないようにしてるのに、それでもこれだもんなー。お返しするのがマジで大変なんだから。」
「そうねえ、去年はあなたうっかり、「エスタトライベッカのへーゼルナッツバー」が好きとか言っちゃったせいで、200箱近くもらったんだっけ?」
「まだあるよ・・・・。もう当分チョコはいいです。」
「まあ、人気者ってことでいいじゃない!」
「・・・・・・あんただって人事じゃないでしょーが。」


そう言ってシュウがじろり、とキスティスを睨むと、キスティスは楽しそうに笑った。


「あら、人事よー。だって、私にはあなたのファンの女の子たちみたいに熱いファンはいないもの。
そんなに高価なものを惜しげもなくプレゼントしてくることって、そんなにないしー。」
「・・・・・・むむう。」


そう言ってむすっとした顔をするシュウがおかしかった。キスティスはお腹を抱えて笑ってしまう。
実は、シュウはかなりガーデンの女の子に人気がある。まるでここは女子校かと思うほど、シュウが通りがかるとどこからともなく黄色い声がかかり、ファンによるお茶会まで開かれていたりするのだ。スコールも顔の綺麗さという点では人気があってもおかしくはないが、「アレは他人のもの」という認識が定着している上に、スコール自身の愛想がよくないので、それほどファンはいない。キスティスのファンは圧倒的に男子が多く、女子ほど濃いファン活動はしていない。なので、女子に多大なファンを持つシュウの人気が、一応バラムガーデン1といえるのだった。


シュウはプレゼントを整理しながら苦笑する。


「全くなんでこんなに騒がれるんだかわからんわ。」
「シュウがオトコマエだからでしょう?
あら、ホントに女の子ばっかりね、プレゼントの送り主。」
「どうかと思うよね、ここ共学なのに・・・・。」
「ホントだよ。」


後ろからいきなり声がして、シュウとキスティスは振り向いた。そこにはやっぱり荷物を山ほど抱えたニーダがいた。


「これ、シュウへのプレゼント追加分だよ。
・・・・・・全く、俺のことは絶対配達人かなにかと勘違いしてるよね、彼女達・・・。」
「ごめん、ニーダ。」
「もういいよ、慣れたよ。毎年だもんな・・・。」


肩をすくめて苦笑するニーダに、シュウも笑った。そして机の上にも山のように積まれたプレゼントを見て、・・・・・・やっぱり溜息をついた。


去年は、お返しやら手紙の返事を書くのに一月かかった。
今年はいったいどれだけかかるのだろう・・・・。
のんきに笑っているキスティスやニーダが憎らしい。
そんなシュウの視線に気づいたのか、ニーダはくすり、と笑った。


「今日はお誕生日だから、昼飯奢ったげよう。プレゼントはもうたくさんもらってるみたいだし?」
「・・・・・あたし、特別ランチがいいです。」
「了解。」


13.オトコマエ end.


******************

モテル女は大変なのです。