19、いつも一緒に
(スコール×リノア 20歳)


いつも一緒にいたいとは思うけど。
でも、いつも一緒にいなきゃ嫌だとかは思わない。


「よっ・・・・と。」


わたしは、シーツをベッドにきちん、と巻き込んだ。そろそろ季節は初夏を迎えてて、今までみたいな暖かなシーツより、もう涼しげなものに換えた方がいいかなと思ったから。今日は、とてもいい天気だ。だから、ついでに部屋の模様替えもしてしまう。
まるで、コインが跳ね上がりそうなほど完璧に出来た、ベッドメイキング。わたしは、満足げに微笑した。


今日は、久しぶりにスコールがバラムに戻ってくる日だった。


昔と違って、わたしも彼も仕事を抱えているから、だから2人の休みは合わないこともしばしばある。実際、今日だって、わたしは彼に会うのは3週間ぶり。彼自身は、今回の任務には2週間ほど前から出かけたらしいのだけど、彼が出発するあたりは、わたしの方が仕事でガーデンには居なかった。だから、彼に会うのは本当に久しぶりなのだ。


初夏独特の、湿気の少ない風を室内に入れるために、わたしは窓を開けた。ぱあっと吹き込んできた空気に、カーテンがそよそよと揺れる。少しずつ強くなる陽射しに、わたしは少しだけ目を細めた。


そして、それほど昔ではないけれど、それでも確かにわたしが子供だった頃のことを思い出した。


あの頃、わたしは。
いつもスコールと一緒にいたくて。一緒にいられないことに泣いたりして。二人きりで生きているわけではないのに、2人で生きたがって。
まるで、2人でいなきゃいけないんだという強迫観念に縛られていたみたいだった。それじゃ駄目なのわかっていたのに、それでもどうすることも出来なかった。
何もかもを欲しがっていた。欲しがることしかしていなかった。


だけど、今のわたしは。
離れても大丈夫だと。いつもは無理でも、でも一緒にいられるときは必ずあるから、だから平気だと思える。
ううん、たまに会うからこそ、かえって一緒にいることの大事さをわかるようになったと思う。一緒にいなくても、でもどこかで彼も頑張っていること、ちゃんとわかっている。だから、わたしも頑張れる。そんな風に思えるようになった。


多分、それはきっと。
わたしが彼を愛して、彼がわたしを愛してくれたから。
一人の殻に閉じこもらないで、気持ちを分け合うように、そんな風に愛することが出来たから。
だから、わたしは、わたしたちは、大丈夫になったのだ。


彼と知り合って、まだ3年くらいしか経ってない。だけど、わたしは劇的に変わった。それはきっと、わたしたちが、『いい恋愛』をしてこれたからではないのだろうか。


風も抜けない、そんな閉鎖的な2人だったら、きっとその中の空気は淀んで、澱のように嫌なものが溜まって。そしてやがて、破滅へと向かっていくだろう。
だけど、わたしたちはそうはならない。
わたしたちは、きっとこれからも上手くやっていける。そんな予感がある。
そんな感情を持てるというのは、やっぱり幸せなことなのだ。


いつも一緒にいたいとは思うよ。
だけど、いつも一緒に居なければいけない、とは思わない。
わたしはわたしで、彼は彼で頑張っている。2人の世界が完璧に一緒でなんかある訳がない。それでいいんだと、そう思える。
だって。
ちょっとした幸せとか、嬉しいこととか、そんなささやかなものを、確かにわたしたちは分け合うことが出来るから。同じような気持ちを持てるということを、わかっているから。
爽やかな風は抜けていくけれど、でも暖かな体温を感じられるくらいの距離にお互いの気持ちがあること、わかっているから。


だから、わたしはいつも一緒にいなくても、大丈夫。
そして、あなたを好きになって、そんなわたしになれて、わたしは本当によかったと思うんだ。


19、いつも一緒に end.


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一人でいる時間もあるから、だから二人の時間をもっと大事にしようと思えるの。