43.Where do we go? (ゼル×三つ編みの図書委員 18歳) 「なあ、どこ行きたい?」 そう聞かれると、わたしはいつも戸惑う気持ちを持つのだけれど。 でも。 *** 久々に、ゼルさんが休暇だった。ゼルさんはSeeDとして今、とても忙しく働いている。わたしはSeeDになる気はなくて、普通の一般生徒だから、ゼルさんほど忙しくはなくって。だから、いつもゼルさんが、わたしに「どこかへ行こう」と誘いに来てくれる。 今日も、そうだった。カウンターのところにやってきて、肘をつきつつ、わたしにどこか行きたいところはないか、と。そうゼルさんは尋ねた。 そのたびに、わたしはいつも困ってしまうの。実は。 だってね、どこだっていいんだもの。ゼルさんと一緒にいるなら、どこかへ出かけなくたっていいの。一緒にいるだけで幸せだなあ、とか、楽しいなあって思うの。だから、どこへ行きたいかなんて、そんなこと思いつきもしない。 付き合うようになって、もう1年が過ぎたけれど。 わたしは、今でもそうだった。 でも。 「あ、どこでもいい、ってのはなしだぜ!?」 先手を取って、ゼルさんがそう悪戯っぽく笑って言った。わたしも、思わず苦笑してしまう。 言わないよ、そんなこと。 わたしは、もう、そんなことは言わない。 昔は、わたし、ゼルさんと付き合っても全然リラックスなんてしてなくって、緊張ばっかりしてた。ゼルさんに嫌われたくなくって、何でもゼルさんの言うことのままにしてた。 だけど、それを、ゼルさんにものすごく怒られた。 ゼルさんは、ただ理由も言わずに怒る、ということはないから、そのときも怒る理由をゼルさんは素直に言ってくれた。 それを聞いて。 わたしは、ゼルさんに本当に酷いことしてるってことが、わかったのだ。 嫌われたくないから、その気持ちは綺麗でも。 でも、全て相手まかせにしてるのは、ある意味ズルイのだ。 だって、人は、人と人が付き合うなら、様々な変化や意見の違いや、視点の違いや、そんなことを感じるのが当たり前だ。それをしないで、ただ相手にあわすっていうのは、それ、相手をすごくバカにしてることだと思う。誰も、自分のクローンみたいなものと付き合いたい訳がない。何をしても反応が返ってこないなんて、そんなの寂しすぎる。 わたしが、わたしの思いを言ったところで、ゼルさんはそれを否定することはない。 そんなことだけで嫌いになるような、そんなちっぽけな人ではない。 だから、何も自分のことを言わないで、全てゼルさんまかせにするってことは、ゼルさんを信用してないってことだ。 わたしは、結局、ゼルさんのためとか言いながら、ゼルさんのことを馬鹿にしてたのだ。 それ、わかったから。 だから、わたしはもう、「どこでも。」とか「なんでも。」とか、そんなことは言わないよ。 「うーんとね、バラムに出来た、新しいレストラン。フィッシャーマンズ・ド・ワーフっていうの?あそこ行きたい。」 「ああ、何か話題になってるとこだな。オッケ、予約しとくわ。」 「ん、お願い。ゼルさんはその前にどこか行きたいとこないの?」 「んー、普段着買いに行きたいかな。最近暇なくって、着る服があんまねえんだわ。」 「わかった。じゃあ、一緒に見に行こ。」 「おう。」 わたしがうーん、と考えながらゼルさんに応えると、ゼルさんも嬉しそうに笑って応えてくれた。 こういうとき、わたしたちは付き合っているのだなあ。そんなことを実感する。 わたしたちは、どこだって行ける。 どこだって、一緒に見れる。 だから。 さあ、どこへ行こうか、二人で? 43.Where do we go? end. ******************* そう、どこへだって行けるんだ(B.G.Nとのコラボ作品) |