47.助手席
(スコール×リノア 18歳)


「リノア、ちょっとスピード出しすぎ!!」
「ん、あれ?」
「あれ?じゃない。ココは制限速度30だぞ。今、60出したろ。」
「そんな出してたかなあ・・・。」


のん気に首をかしげるリノアに、スコールははーと溜息をついた。
ここは、ガーデンの自動車練習所。
一般的にバラムの運転免許を持てるのは、18歳からなのだが、若年のSeeDのためにガーデンには運転練習所がある。運転年齢に達していないSeeDはここで免許を取得するのだ。一種の特別措置のための施設だった。
そして、ここは許可さえもらえれば、一般生徒が運転の練習をすることも出来る。
だから仮免試験前のリノアに付き合って、スコールはリノアの運転練習に付き合っているのだが。


運転は性格が出るとは言うが、まさかこれほどまでとは思わなかった。
そう思って、スコールは頭を抱える。


「お前、もうちょっとメーター見ろよ、ホント。
落ちるぞ、仮免。」
「う、うん・・・。」


眉間に皺を寄せながら、助手席のスコールはリノアにお小言を言う。リノアは少し眉を下げてとほほ、という顔をした。


リノアの運転は、その性格のように奔放だった。先が見えず、まるでびっくり箱だ。それは性格としては可愛いと思うが、運転技術、という点ではシャレにならない。
よく、仮免寸前まで行けたな。
何か賄賂でも贈ったんじゃないか?


「とにかく、このままじゃ落ちるぞ。
丁寧に、しっかりと運転すればいいんだ。何でも急いでやろうとするな。確実に、ゆっくり、な。」
「はい。」
「いきなりアクセル踏むんじゃなくて、ゆるやかに、優しく。だんだんと加速して。」
「うん。」


スコールの声にあわせて、リノアはアクセルを踏む。先ほどのようにいきなり一速に踏みこんだような加速ではなく、一速から二速、三速へとゆるやかにギアが変化していく。スムーズに動く車に、リノアは嬉しそうな顔をした。


「こんな感じ!?」
「そう。
よそ見するなよ、危ないから。」
「うん!!」


目標信号のところで、また緩やかにブレーキ。さっきまでの身体が飛び出していきそうな急停車ではなく、緩やかに車体は止まる。スコールはにっこりした。


「そう。そんな感じだ。」
「うん、わかったー!」


褒められたのが嬉しかったのかもしれない。リノアもにっこりと笑った。その笑顔が、まるで子供みたいで。眩しくて、スコールは目を細める。


「ねえ、わたしが免許取ったらさ。」
「ん?」
「わたしが免許取ったら、またこうやって一緒にドライブに行ってくれる?
わたしが運転して、スコールは助手席で。」
「・・・・・・取れたら、な。」


くすり、と少しだけ蒼の瞳を揺らめかせて笑うスコールに、リノアもほんの少し桜色に頬を染めて笑った。


47.助手席 end.


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いつか。
あなたを乗せてどこか遠くへ行くわ。