5.刹那の時
(アルティミシア)


しもべが消滅する寸前に放った断末魔の叫びが、アルティミシアのこころに響いてきた。うとうととしていた意識を彼女は手繰り寄せる。


・・・・・また、一体がやられたか・・・・。


想像通りというか、憎憎しいというか。彼らの強さはやはりアルティミシアと同時代の人間やSeeD達よりも抜きん出ていた。まあだからこそ、「伝説」として語り継がれたのであろう。
アルティミシアは城内の様子を遠視して、・・・・それからくすりと笑った。


もうすぐ、彼らは私の元にやって来るだろう。
もうすぐ、私は私の時間を止めることが出来るだろう。
そうしたら、私はやっと、一人ではなくなる。
私の願い、私の夢はやっと叶うのだ。


時間を圧縮するという目的は、ただの前提だった。私を殺せる者を呼び寄せるために時間を圧縮する必要があった。そのためだけの目的であって、ただの手段だ。別に時間圧縮をしたかった訳ではない。
私は、私の時間を止めたいだけだった。
その願いはもうすぐ叶う。それを思うとどういうわけか高揚感を感じた。


私は私の人生の終わりを迎えて、喜びしか感じない。それは寂しいのか、それとも幸せなのかはわからないが。でも、元々私は人間ではないのだ。だから、人間らしい死を望む方が無理と言うものか。そう考えて、アルティミシアは自嘲した。


私はとうの昔に人間であることをやめた。だからこそ、こんな最期が私にはふさわしい。


優しさなんかいらない。
それは私を光の中に溶かしてしまうから。
震えるほどの憎しみを頂戴。
そうすれば、私は私の存在意義を感じることが出来る。


こんな私は間違っているのかもしれない。それでもこれが、この刹那のときに感じる、私の真実。
それが間違いなのかどうかは、誰にもわからない。わからなくていい。ただ、私には私なりの思いがあっただけだ。


もうすぐだ。
もうすぐしたら、私の長く退屈な時間も終わる。
それを終わらせるのは、あの蒼い瞳をした少年。
懐かしい記憶を呼び覚ます、あの瞳の色。私が私の意識を持ち始めたときに初めて見たあの色。ずっと還りたかったあの色の海。


私が死ぬ、その刹那の瞬間を待ち望んで私はここまで来た。
さあ、肌を刺すような憎しみの眼差しを私に頂戴。それは、私の刹那の時を鮮やかに染め上げるだろう。


その色を見たときに、私は何を思うのか。
とても、楽しみだ。
これほどわくわくすることはない、そう思えるほど楽しみだった。


スコール達が城の最上部にたどり着くまで、あと少し・・・・・・・。


5.刹那の時 end.

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最期のときを、夢見ている。